JAZZピアニスト緑川愛のブログ

緑川愛のライブスケジュール

ピアノ弾きました

昨日、ブログ会社(?)からメールが来ました。

 

一カ月ブログ更新していませんよ。と。

 

4月も終わりますが、5月のスケジュールをアップすることができません。

 

なぜなら、ピアノを弾く仕事はないからです。

 

東京のミュージシャンは皆そうだと思います。

 

唯一、先日は外苑前のレストランカナユニで配信ライブを行うことができ、ピアノを弾くことができて本当に幸せでした。

 

これまでの人生で旅行へ出かけ二週間くらいピアノを弾かなくても、それはそれで新鮮だなんて思っていた時もありましたが、今は毎日不安で寂しい思いです。

 

28日には、船橋のコクリコットフォルテでセッションがありました。

 

前もってお店の留里子ママからメールで出演されますか?と打診がありました。

 

私はお店の方針にお任せしますと返事をしたのですが、時間を早めてセッションを行いますのでいらして下さいとのこと。

 

この時期、大々的に「皆さんぜひいらしてくださいね。」と言うのははばかられ、どなたもいらっしゃらなくても仕方ないという気持ちと、じゃなにしに行くのだろうという重たい気持ちの両方を抱えて出かけました。

 

お店に到着すると、広い店内の奥のカウンターにマスクをしたママが一人。

 

お店に入ってすぐに思わず

「大丈夫?」

と囁くように聞いてしまいました。

すると、

「大丈夫です!」

とママの明るい声。

 

そろそろとママから離れた場所に座るとまもなく、一人お客様が。

演奏を目的としていらした訳ではないようなのでお互い遠巻きにおしゃべりをしておりました。

 

すると、もう一人会社帰りとみられるお客様が

「ボトル入れに来たよ。」と。

ママが「もう三本入ってますよ。」

「いいの、いいの。」

とボトルの代金を支払ってお帰りになりました。

 

「あの方は会社で夜お店で飲むことは禁止になっていて、でもボトルだけ入れに来てくださるんです」とママ。

 

「お客様、応援してくださってるんですね」

と言うとママはマスクの下でにっこり笑って(たぶん)うなずきました。

 

すると、テナーサックスを抱えた地元のお客様。

友人でもあり、いつも私の応援に駆けつけてくださるフルートおじさん。

 

「わあ、いらしてくださったんですね。よし、演奏しましょう!」

 

みんな離れて、私はマスクをしてセッション開始です。

そんな中、ピアノを弾くというお客様も。

 

三人も演奏するお客様がいらしてくださればもう十分です。

 

楽しくセッションをしていると、やはりいつも応援してくださるリスナーの方も。

 

皆さんからお酒をごちそうになり、ピアノを弾いてすっかりご機嫌になってしまいました。

 

また、皆で演奏を楽しんでいると、一人の女性のお客様が入ってらして

「ピアノの演奏が聞きたいです」

とおっしゃるので

「もちろん、私でできるものなら」

と答えると

「この季節に申し訳ないのだけど、枯葉を」

 

「もちろん喜んで!」

 

演奏して戻ると、

「とても素敵でした。私のイメージと違って、びっくりしました。ピアノで遊びましたね。

ごめんなさい、私、日本語上手じゃないからうまく言えないのですが」

と、たぶん韓国の女性だと思いますがとても喜んでワインを振る舞ってくださいました。

 

思わず

「今月、ほぼ全てのライブは中止で今日もこんなふうにピアノを弾いて喜んでいただけるなんて、全然思ってなかった。」

と言うと、ママが

「東京のミュージシャンは皆さん、今月演奏したのはウチだけとおっしゃるの。皆さん、生活も大変そうだし。」

と。

「私、愛さんもどうしてるか心配で。」

「ワンちゃんたちを食べさせられなくなっちゃうって思って」

 

お店を支えるのがどれだけ大変か、想像するに余りあります。

それなのに私の心配やミュージシャンの心配をしているなんて。

 

ああだから、このお店を支えなきゃと思って下さるお客様がいるんだと思いました。

 

もう涙が出そうになって、振る舞いのワインも手伝ってすっかり酔っ払いに。

 

帰りはどうやって帰って来たんだか。

 

電車の中でも眠りこけて、ふと目を覚ました時に遠くの座席に友人のフルートおじさんが見えました。

駅に着くと

「愛さん、着きましたよ」

と、それだけをしっかり覚えています。

 

次の朝、ちょっと二日酔いの頭で皆さんの温かさをもう一度噛みしめました。

 

 

本当に本当にありがとうございました。